北里大学医学部教育研究単位衛生学単位3.自家産米摂取によって経口カドミウム曝露を受けた農家についての疫学研究及び保健対策

衛生学単位

3.自家産米摂取によって経口カドミウム曝露を受けた農家についての疫学研究及び保健対策

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自家産米摂取によって経口カドミウム曝露を受けた農家についての疫学研究及び保健対策

 日本人のカドミウム摂取源の約40%は米であるため、国民をカドミウムの有害健康影響から守るためには米中のカドミウム濃度を低く抑える必要があります。そのために、我が国では従来米中カドミウム濃度の基準値を0.4 ppmに設定して市販米を管理してきました(食品衛生法に基づく規格基準により正式に0.4 ppmと定められたのは2010年のことです)。また、1971年に施行された農用地汚染防止法によって基準値を超えるカドミウム濃度の米が生産された農用地は農用地土壌汚染対策地域に指定され、種々の対策事業が行われてきました。特に、かつてイタイイタイ病患者が多発した富山県神通川流域のカドミウム汚染地は、2012年に水田土壌汚染の復元事業が完了しました。このように、我が国ではイタイイタイ病が大きな社会問題になったことを契機にカドミウム環境汚染に係る社会的対策が整備されてきました。
 ところが、秋田県は過去に非常に多数の鉱山や精錬所が存在・活動していたこともあり、産業技術総合研究所が提供している地球化学図によると土壌中カドミウム濃度の高い地域がおそらくは日本で最も多く、実際に秋田県の過去に農用地土壌汚染対策地域に指定された面積と件数はともに日本で最大です。当研究室は、そのような農用地で米作を営み、自家産米を摂取してきた農家を対象とした疫学研究に取り組んでおります。そしてこれまでに、これらの農家は基準値を超えるカドミウム濃度の自家産米を摂取してきたために体内のカドミウム蓄積量が高く、しかも中には腎尿細管機能障害を示す人も存在することを明らかにしてきました。しかし、近年は稲の出穂期である8月中に田の水を張るという湛水管理を実施することにより、基準値を超えるカドミウム濃度の米は生産されなくなっております。
 さらにこれらの事実に基づき、上記のようなカドミウムの経口曝露を受けた農家に対する保健対策として、近年は従来の住民健康診断に加え、地域の中核医療機関に御協力いただき、通院・入院中の患者さんで腎機能低下の見られる人に対して実施するカドミウム腎症スクリーニングにも自主的に取り組んでいます。

  • 3.自家産米摂取によって経口カドミウム曝露を受けた農家についての疫学研究及び保健対策:画像1

    図1 秋田県の農家女性における尿中カドミウム濃度と尿中β2-microglobulin (β2MG)濃度との関係。年代別で比較すると、70歳未満では尿中カドミウム濃度が高度になっても腎尿細管機能への影響は明らかではないが、70歳を超すと尿中カドミウム濃度10µg/g cr.前後から急激に腎尿細管機能が低下する傾向が見られる。Horiguchi H et al., Environ Int 56 :1–9, 2013

北里大学医学部 衛生学単位 3.自家産米摂取によって経口カドミウム曝露を受けた農家についての疫学研究及び保健対策

連絡先: 〒252-0374 神奈川県相模原市南区北里1-15-1
堀口 兵剛

教授:堀口 兵剛

Hyogo HORIGUCHI, MD, PhD

担当科目:

予防医学系、公衆衛生学

更新日:2014年07月16日