北里大学医学部教育研究単位神経再生医療学講座

神経再生医療学講座

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教育、研究について

パーキンソン病・アルツハイマー病を始めとする神経変性疾患は、根本的な治療法もないまま、神経系を侵す進行性の疾患の中で、今や最も重要な位置をしめている。年々増加するこれらの変性疾患は、寝たきり患者さんを増やし大きな社会問題になっている。これらの疾患の発病原因を分子レベルで解明し、その進展を防止する治療法を確立することは、現在に生きる我々の使命と考えられる。 このような状況に鑑み、近年京都大学山中教授のもと日本においてiPS細胞が確立した。素晴らしい世界に誇る研究成果で、将来の医療を大きく支えると考えられる分野である。しかし未だ、臨床に直結する報告は少なく、臨床面からの介在が少ないと言われている。幸い北里大学は、神経系疾患は、神経内科学、脳神経外科学で豊富な臨床症例を有している。これらの神経疾患に対して新たな治療法を開発するべく基礎研究を推進する。

神経再生医療学講座では,遺伝子治療,細胞治療により現在よい治療法のない進行性神経疾患の改善をめざすものである.パーキンソン病にはかなりよい治療方法が開発されているが,それでも進行期には,病変はドパミン性神経細胞の変性にとどまらず,多数の神経伝達物資の障害がみられ,ドパミン性の治療のみでは,これらの症状の改善が難しくなる.更に,多系統萎縮症,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,筋萎縮性側索硬化症,各種認知症性疾患にいたっては,ひとつとしてよい治療法はない.これらの疾患についてよい治療法を発見することは焦眉の急である.

これらの疾患は,多くの系統が障害され,ひとつの伝達物質の操作のみでよい治療効果を上げるのは至難の技である.そこで,ひとつひとつの疾患の特徴をよく研究し,よい遺伝子タージェットを定め,遺伝子治療を構築すれば,よい治療法となるのではないかと考える.

パーキンソン病:家族性パーキンソン病では単一遺伝子の異常で黒質障害が発症する.その機序をiPSを作成して研究することは,弧発型パーキンソン病の発症にも有用なヒントを与える.すでにPARK2に関してはiPSを慶応大学岡野教授グループとの共同研究で作成に成功し,ミトコンドリに障害のあることを明らかにしている.北里大学病院で経験したPARK2の患者に関してはα-シヌクレインの蓄積も認められた.更に相模原に存在するPARK8の家系や孤発型パーキンソン病に関してもこの研究を推進する予定である.ヒトのパーキンソン病に関してはiPSを用いた移植研究が京都大学で始まろうとしている.まだ腫瘍化の危険はあるようであるが,その結果を見守り,当方でも治療への可能性を検討する.

多系統萎縮症:本症は被殻と橋小脳の萎縮が主要所見で,進行性のパーキンソニズム・小脳失調を呈する.我々は本症の発症にカルビンディンの低下があるのではないかと考えている.本蛋白はカルシウム結合能力を有し,グルタメート受容体の刺激に伴い細胞内に流入するカルシウム濃度が高濃度となりすぎないよう調節する作用があると推定される.我々はすでに本学に保存されている剖検材料を用いて,多系統萎縮症の線条体においては,カルビンディンのみならず細胞内蛋白のリン酸化に関係するDARPP32が低下していることを論文にまとめている.今後この結果をモデル動物,及びヒトの治療に応用したいと考えている.

筋萎縮性側索硬化症:本症は運動ニューロンを系統的に侵す変性疾患である.よい治療法はなく,数年のうちに呼吸筋麻痺で人工呼吸が必要になる悲惨な疾患である.最近TDP-43という蛋白がこの病気の発症機序に関連することが報告されており,この蛋白を用いてモデルマウスを作製している.患者の症状は手指の筋力低下などから数年の経過で全身の筋肉の異常へと広がるわけだが,モデルマウスを用いてこの病気の進行の機序を明らかにして患者の治療につなげることができないかと考えている.また我々は,以前パーキンソン病患者に対し,granulocyte colony stimulating factorを投与し,一部の患者ではあるが,症状の改善を見たことがある.特に副作用はなく,白血病などの治療法として確立している治療法であるので, これをまず筋萎縮性側索硬化症の患者さんに試みたい.

北里大学医学部 神経再生医療学講座

教 授:東原 正明(講座責任者)

連絡先: 〒252-0374 神奈川県相模原市南区北里1-15-1
水野 美邦

客員教授:水野 美邦

MIZUNO Yoshikuni, MD

専門分野:

神経内科学、神経科学

キーワード

パーキンソン病、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、神経変性疾患、iPS細胞、ドパミン、細胞治療

更新日:2013年06月25日