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教育研究プログラムプロジェクト
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    私立大学研究拠点形成支援事業-21年度採択-2009:04:08:16:35:26
09.04.08

研究組織名:創薬シーズ探索研究拠点

研究プロジェクト名:迅速な医薬開発を目指した創薬シーズ探索研究拠点の創出

研究テーマ名
1.モデル動物系を用いた精神・神経疾患治療薬のシーズ探索系の確立

2.病態モデルを用いた脈管新生制御のための標的分子の解明と治療シーズ探索研究

3.悪性腫瘍の標的分子解析と前臨床装薬シーズの系統的探索による診断、治療、機能再建法の開発型研究

4.生体防御系反応性異常疾患群の機能調節を目指した治療の開発

研究期間:平成21年度~平成26年度

研究代表者:馬嶋 正隆(医療系研究科 教授)

研究組織
テーマ1  高橋 正身、阪上 洋行、小幡 文弥、天羽 康之
 
テーマ2  馬嶋 正隆、天野 英樹、北里 英郎
 
テーマ3  糸満 盛憲、堀江 良一、山下 継史、岡安 勲
 
テーマ4  廣畑 俊成、玉内 秀一、江島 耕二

研究の概要
①研究の目的・意義
 医療の高度化が進む現代においてもなお、多数の国民が難治性疾患に苦しんでいる。さらに超高齢化社会を迎えた今、莫大な医療費の増加が大きな社会問題となっている。これらの課題に迅速に対応していくためには、1)難治性疾患克服や早期診断法開発のための基礎研究を強化し、2)迅速に新規治療薬や診断法を評価し実用化していくことが不可欠である。これらの諸問題に応えるため、北里大学は全学的な取り組みを進めてきている。ハイテクリサーチ整備事業の助成受け、遺伝子改変動物の利用を容易にする実験動物施設を整備し、多くの症例に支えられた臨床研究および治験を積極的に進めてきた。画期的な新薬を開発していくためには、臨床現場と密着した基礎研究を強化、加速することが不可欠である。特に治験前の前臨床研究には、薬物の作用機序や副作用、毒性などを調べるため、実験動物を用いた研究が重要な位置を占めている。本申請は、新たに前臨床動物実験に特化した施設を整備することを目的としている。これにより、新薬シーズ探索、新規治療薬や診断法の実用化が加速することが期待される。

②研究体制
 新たな新薬や診断法のシード探索のための「創薬シーズ探索研究拠点」を設立する。 重点疾患領域を考慮し、創薬に経験のある研究者により、以下の前臨床基礎研究ユニットを設置しプロジェクト研究を推進する。1) 神経疾患研究ユニット:気分障害、てんかん、神経変性疾患に関わる研究を推進し、脳・神経疾患関連薬のシードを検索する。2) 脈管疾患研究ユニット:血管生物学を基盤に病態治療のためのシードを検索する。3) 腫瘍研究ユニット:腫瘍生物学を基盤に病態治療のためのシードを検索する。4)免疫・炎症疾患研究ユニット:免疫反応や自己免疫疾患の制御・治療のためのシードを検索する。加えて、実用化を加速・促進させるため、臨床研究、治験を推進する既存の附置研究施設 Kitasato Clinical Research Center (KCRC)と連携し、外部企業からのシード化合物の評価を受託するとともに、KCRCでの臨床研究からのフィードバック(既存薬物の適応拡大、多剤併用療法などの提案)情報に対応して、実験を企画する。KCRCとの連携を円滑にし、効率的運営・評価体制を確保する。KCRCの医療情報学、マーケティング学、疫学、マネジメント学等の手法を駆使することにより、探索されたシードを臨床応用へ展開するか否かを迅速に評価する。

【テーマ1】
モデル動物系を用いた精神・神経疾患治療薬のシーズ探索系の確立

①研究分野
  神経系にはパーキンソン病に代表されるような神経変性疾患や、うつ病や双極性障害などの気分障害、ストレス障害、てんかんなど数多くの難治性の疾患が今なお存在し、その新規治療法や早期診断法の確立が急務となっている。さらに脳血管障害による神経細胞死や、事故による脳機能障害や運動障害を持つ患者数も増加しており、失われた神経機能をいかに修復するかも大きな課題となっている。難治性の神経疾患や神経損傷の治療には、新規の作用機序による治療薬の開発と共に、神経幹細胞を用いた再生治療法の確立が期待されている。本研究は、申請者らが独自に見いだした創薬ターゲット候補やユニークな神経幹細胞の有用性を動物モデル系で検証すると共に、新たな神経疾患治療薬のシーズ化合物の探索や神経幹細胞を用いた再生治療法の開発を目指している。

②研究内容
A. 高橋はシナプスタンパク質であるSNAP-25のリン酸化部位に変異を起こしたノックインマウスを作成し、変異マウスが側頭葉てんかんを発症することを見いだした。遺伝子変異による側頭葉てんかんのモデルマウスはこれまで例が無く、極めて独創性の高い解析系である。本計画ではこの変異マウスを用いて、てんかんの発症や全般化機構を明らかにすると共に、抗てんかん薬の開発のためのスクリーニング系を確立する。
B. 小幡は相模原家系の家族性パーキンソン病の原因遺伝子を調べ、原因分子として同定されたLeucine Rich Repeat Kinase 2 (LRRK2)が、神経細胞でアポトーシスからの保護作用を持つことを見出した。本計画では相模原家系に見られる変異を加えたLRRK2ノックインマウスを作製し、野生型マウスとの間で薬剤誘発神経変性に対する抵抗性を比較する。さらに変異マウスの黒質で量的・質的(リン酸化など)に変動する分子を同定し、LRRK2神経細胞保護カスケードを明らかにし、そのカスケードを賦活化するための薬剤を探索する。
C. 阪上はマウスに抗うつ薬を投与すると脳のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼIV(CaMKIV)活性が上昇し、遺伝子変異でCaMKIVを欠失させるたマウスではうつ様症状が現れることを見出した。本計画ではこの独自なノックアウトマウスの脳に生じている異常を、海馬歯状回での神経新生や発現遺伝子などを含めて解析すると共に、抗うつ薬を投与した際の変化を解析することにより、CaMKIVを介した気分障害の分子機構を明らかにしCaMKIVを標的とした新規の抗うつ薬を開発することを目指す。
D. 天羽は世界に先駆けて、末梢神経損傷部等の損傷組織の修復と機能回復に、皮膚由来培養毛包幹細胞移植が有効である事を証明した。本計画では、さまざまな神経損傷への毛包幹細胞移植の有用性を免疫不全マウスを用いて検証すると共に、再生能を促進する因子を探索する。さらにこれらの成果を基盤に、ヒトへの応用を目指す。

【テーマ2】
病態モデルを用いた脈管新生制御のための標的分子の解明と治療シーズ探索研究

①研究分野
医療の進歩に伴い、多くの疾患が征服されてきた。しかし、がんをはじめとする難治性疾患に対する治療成績は不十分である。血管・リンパ管新生はがんの増殖、予後に深く関わり、治療標的としての意義が大きい生体反応である。加えて、虚血性疾患や増殖性炎症でも重要な予後規定因子である。我々は、脂質メディエーターのプロスタグランジン(PG)が腫瘍周囲のストローマ(間質)組織に作用し、同組織で主に血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を誘導し、腫瘍依存性の血管新生を増強することをPG受容体ノックアウトマウスを用いて証明してきた(JEMなど)。ストローマ細胞は骨髄から動員されることはよく知られている。また、Nature Med.に発表したが、VEGF受容体の一つであるVEGFR-1陽性、ケモカイン受容体CXCR-4(リガンドはStromal cell derived factor (SDF)-1)陽性の骨髄細胞の血管新生巣への動員が、血管新生の進展に重要であることを我々は見出した。P-Selectinを介した血小板の接着が血小板の顆粒中に含まれるVEGF, SDF-1を局所に供給し、VEGFR-1陽性、CXCR-4陽性の骨髄細胞をリクルートさせることで血管新生を増強することが示唆される。本研究では、脈管新生が病態の進展の鍵になっている多彩な難治性疾患病態モデルを用い、脂質メディエーター、生理活性ペプチド、サイトカイン等の働きを明らかにし、保有する低分子化合物ライブラリーによる制御と遺伝子改変細胞を用いた新しいタイプの遺伝子治療を目指す。

②研究内容
本研究では、これまでの上記のような成果を基盤に、第一段階として、遺伝子改変マウスを用いて、
1)病態時の脈管(血管・リンパ管)新生が内因性の炎症性シグナル分子❶ PG、❷ VEGF、❸ SDF-1により制御されているか否か解明する(馬嶋、天野)。さらに、2)骨髄からの間質細胞の動員が炎症性シグナルにより制御されているか解明する。ついで第二段階として、3)上記炎症性シグナルを制御する目的で、保有する低分子化合物ライブラリーによる病態制御を試みる(馬嶋、北里)。さらに、4) 炎症性シグナル分子の遺伝子改変細胞を作成し病巣にデリバーした場合に、病態を制禦し得る「分子標的細胞治療」となり得るか否か検討する(馬嶋、北里)。
病態モデルとしては、1) 下肢虚血モデル、2) 心筋梗塞モデル、3) 腫瘍接種モデル、腫瘍骨転移モデル、4) マトリゲル、スポンジ移植血管・リンパ管新生モデル、5) 創傷治癒モデル、胃・大腸潰瘍治癒モデル、6) 皮下リンパ管再生モデル、7) 肝障害モデル、8) 子宮内膜症モデル等を検討する。
これまで特定遺伝子の発現制禦を目途としたウィルスベクターを用いた遺伝子治療が試みられてきた。しかし、遺伝子発現が一過性であること、ウイルス自体の病原性があること等のために実用には制限が多い。これらを解消するために、我々は導入遺伝子産物を持続産生する、あるいは持続的に欠損する遺伝子改変細胞を用いた細胞治療を試みる。治療的介入が不要になった時点で、遺伝子改変細胞をアポトーシスさせ(前もってHSV-tk遺伝子を導入した上で、ガンシクロビルを投与)、同細胞を除去する。有効•安全性に問題がある従来型遺伝子治療から「分子標的細胞治療」への新展開をはかる。

【テーマ3】
悪性腫瘍の標的分子解析と前臨床創薬シーズの系統的探索による診断、治療、機能再建法の開発型研究

①研究分野
  現在の悪性腫瘍の化学療法ではDNA合成を阻害しcytocidalに働く医薬を組み合わせた治療が主流である。その用法は臨床家により芸術の域まで高められたが、治療成績は限界に近づきつつある。そこで、細胞の分化・増殖を制御する腫瘍細胞固有の分子に着目し、その機能を特異的に調節する分子標的薬の開発が進みつつある。これまで成長因子受容体等を標的とした医薬が実用化されているが、有用な標的分子は他にも多数あると考えられる。本テーマでは、腫瘍生物学に基づき、悪性腫瘍の診断、治療と術後機能再建に関する前臨床創薬シーズの探索を行う。まず標的分子の構造と機能を解析し、腫瘍におけるその動態を診断に活用する。次に北里研究所が保有する低分子化合物ライブラー等のスクリーニングを行って有用なシーズを得ると共に、術後の機能再建も含む腫瘍の治療法の開発を目指す。

②研究内容
 新たな抗腫瘍薬の分子標的に、リンパ系、骨髄性腫瘍等ではnuclear factor (NF)-κB、 anaplastic lymphoma kinase (ALK)、 Janus kinase (JAK) 2、前立腺癌ではL-typeアミノ酸トランスポーター1 (LAT1)、消化器癌等ではホメオドメイン・タンパク(HOP) と Epc1が挙げられる。本テーマでは、これらの標的分子の解析とシーズの開発を系統的に実施する。前臨床シードが既に見いだされた分子標的[例、NF-κBとDehydroxymethylepoxyquinomicin (DHMEQ)、LAT1とJPH203等]では、シーズの標的結合スペクトルを解析後、主要な標的とシーズの結合様式をタンパク質科学、構造生物学的手法により解析する。また薬物存在下での標的の動態を細胞生物学的手法により検討する。さらにモデル動物を用いて、シーズの体内動態、薬物代謝、毒性、投与法等について検討する。種々のシーズ誘導体を一連の解析・開発系に載せて1相試験を目指す。シーズ未知の分子標的[例、ALK、JAK2等]では、低分子ライブラリー(北里研究所が保有する植物、微生物由来天然化合物ライブラリーを含む)を用いたシーズ探索を行って解析・開発系に載せる。例えば非ホジキンリンパ腫ではAlkとヌクレオフォスミン(NPM)遺伝子の融合による変異型ALKが発癌に寄与している。本融合タンパク質を発現した腫瘍モデル細胞を用いたライブラリーのスクリーニングによりシーズを得る。また、NPM-ALK cDNAを用いてノックインマウスを作製し、モデル動物として解析・開発系に供する。また、細胞外マトリックス分子に着目した薬物送達システムは腫瘍切除後の再建に有用と考えられる。細菌由来のコラーゲン結合ドメイン (CBD)と副甲状腺ホルモン(PTH)を融合したPTH-CBDは、組織のコラーゲンにアンカーリングし骨形成を促進できた(国際特許申請済)。PTH-CBDを移植骨に結合することで、骨自身にPTHの局所因子としての多面的作用と、徐放効果による長期間のPTH 作用が期待でき、母床骨と同種移植骨との融合促進および同種移植骨の吸収・置換促進など有用な前臨床シードと考えられる。移植用同種骨、ナノワイヤー加工を施したチタン材料とコラーゲン、PTH-CBDを組み合わせ、モデル動物を用いた組織学的検討、骨量の定量、力学強度試験を行って全く新しい再建法を確立する。

【テーマ4】
生体防御系反応性異常疾患群の機能調節を目指した治療の開発

①研究分野
免疫系は生体に侵入する様々な異物、寄生体を排除し生体の統一性を保つ働きを持つ.その排除過程である炎症反応は自己の細胞組織の破壊を伴う過激な反応である。このため、反応不全ばかりでなく、過剰な反応性も生体自身に対する害となる。このような性格を持つ免疫反応は様々な調節機構により制御されているが、調節がうまく行かないと、アレルギー、自己免疫疾患、炎症生腸管疾患などの問題を引き起こす。本プロジェクトではこの様な疾患であるリュウマチ性関節炎(テーマ1)、即時型アレルギー性疾患(テーマ2)、抗腫瘍免疫不全(テーマ3)の三疾患について、分子/細胞レベルでの新たな標的を定め、その治療薬(法)を探索するものである。

②研究内容
(テーマ1)  リュウマチ性関節炎に関しては、これまでに増殖滑膜細胞の前駆細胞と考えられる骨髄由来CD34+細胞のTNF-αに対する異常亢進反応性があることを示してきた。これらの結果に基づいてTNFRシグナル伝達亢進に関与するNF-kB, FKBP5, KLF5を標的とした阻害剤を探索する。 NFκB1, FKBP5, KLF5のトランスフェクタントの中から得られたTNF-αに対する異常反応性(増殖、形態変化、サイトカインの産生など)を示す細胞を標的としてスクリーニングを行なう。
(テーマ2)  I型アレルギーについてはすでにアレルギーを発症した患者に近い状態のGATA3トランスジェニックマウスの実験モデルで抗アレルギー物質のスクリーニングを行なう。卵白アルブミンに対する即時型皮膚反応をアッセイ系とし、さまざまな物質の抑制効果を検討する。こうして臨床応用可能なものを選び出し最終的には臨床試験につなげることを目指す。
(テーマ3) 腫瘍によっては変異タンパクのペプチドがクラスII MHCでしか提示されないものも多数あるはずである。クラスII MHCで提示される抗原を認識するCD4+T細胞はヘルパーで標的細胞傷害活性を持たない。この活性を付与するために傷害活性担当タンパク遺伝子の発現を促進する転写因子Eomesの遺伝子を治療に用いる事を目標とし、その効果の確認、効率の良い遺伝子導入法の開発を行う。